「サッカー」と「フットボール」の違いと歴史

サッカーとフットボール、どこがどう違うの!?

どちらも傍目には同じスポーツと考えられがちです。

いったいどちらが正しいのでしょう。
あるいは、どちらも正しいという可能性もありますが…

サッカーが好きな人であってもこの違いについて知っている人は少ないかもしれません!

あまりサッカーを知らない人でも分かりやすいように工夫して伝えていきます。

サッカーの呼称の違いやその意味などについて歴史的背景を辿りながら紹介していきます。

でも、ちょっとだけサッカーの昔話も入りますので、あまり興味がない人にとっては、つまらないと感じてしまうかも。

しかし、これを読み終えたら、近くにいる人に話してしまいたくなるくらいの内容を盛り込みました。

貴重なお時間を少し頂戴しますが、よろしくお願いします。

日本語でいうフットボールって?

ちょっと変に感じるかもしれませんが、あえてこんな質問をします。

みなささんは日常生活を送る中で、「サッカー」というスポーツをどのように呼びますか?

ほとんどの人は「サッカー」ですよね。

では、「フットボール」って聞かれたら?

ある人は「アメフト」を、他の人は「ラグビー」「サッカー」を思い浮かべるでしょう。

実は、「フットボール」という単語だけでは、日本においては何のことだか分かりません。

つまり、フットボールをどう判断するかは、聞き手が想起したスポーツが答えとして返ってきます。

その多くは、サッカーかアメフト(アメリカンフットボール)のどちらかが挙がる可能性が高いでしょう。

ここまでの流れを整理すると、日本では「フットボール」は聞き手に委ねられた言葉と定義できます。

ですから、話し手と聞き手の間に少し混乱が生じても不思議ではありませんね。

フットボールの名の由来は?

世界各地に存在していたボール遊び!

はじめに日本国内の呼称を確認したところで、次はサッカーやフットボールの由来について話していきます。

今から200年以上も前の話になりますが、ヨーロッパを中心にボールを蹴る遊びが行われていたそうです。

<参考画像>

まあ、日本では平安時代に蹴鞠が行われていたという事実は横に置いて話を進めていきます。

家畜として飼われていた豚や牛の膀胱(ぼうこう)を膨らませて、それを動物の革で包んだものがサッカーボールの代用品でした。

その中でも特に、イングランドのパブリックスクールを核として、ボールを蹴ったり手で運んだりするボールゲームという遊びが流行っていました。

当時のパブリックスクールは、上流階級の子弟が寮で生活しながら学校生活を送る男子校のこと。

私立学校の中でもトップの一握りを構成するようなエリート校です。

しかし、その当時はきちんとしたスポーツとして確立していなかったため、明確なルールはありませんでした。

もしかしたら、日頃のストレスをそれで発散していたのかもしれませんね。

ほとんどルールもないのに、いったいどうやって勝ち負けを決めていたのでしょうか!?

ボールゲームは乱闘ゲームそのものだった!

それこそとても単純明快なゲームで、ゴールにボールを運び込んだら勝ちとなります。

ゴールは、2本の柱に棒を渡しただけのシンプルなもので、現代のように網はありません。

足で蹴っても、手を使っても良かったので、とても荒々しいスポーツだったようです。

上の画像は当時のボールゲームを描いた絵ですが、すごい形相をした人がいますよね。

ちょうどこれはルールを知らない幼稚園の子どもたちが、必死になってサッカーボールをただただ追いかけ回す様子に似ています。
組織だったプレートは程遠く、ボールが来れば団子のようにかたまって集団で動き回っていたのです。

これはある意味、無秩序なスポーツですからケガ人だけではなく、死者まで出てしまっていたようです。

ここまで来ると、ゲームというよりも格闘技に近く恐ろしいものを感じますね。

この写真を眺めていると、プロ野球の乱闘シーンがパッと脳裏に浮かびました。

バッターの頭をかすめてしまうような危ない投球に対し、キレてしまってピッチャーに殴り掛かる!すると、すかさず周りの選手たちも巻き込んでの大乱闘をテレビ中継で目にしたことがあると思います。

ボールゲームの激しさはこの比ではありません。

おそらく想像もできないほどの衝撃や激しさを伴っていたでしょうから、最悪の事態を招いてしまっても不思議ではありません。

そうなるべくして、そうなったとしか言えないのではないのでしょうか。

当時の若者たちは、まさに命がけでボールゲームに打ち込んでいたわけです。

血気盛んな年代の若い男の子がプレーしていたのですから、勝負となれば手加減はないでしょう。

もちろんその時代にフェアプレーなんて考えは、存在しなかったと思います。

上級生が下級生をかわいがるための方法としても利用されていたんじゃないかなって邪推してしまいます。

ホントに今の時代で「サッカー」ができて良かったなって思いませんか!?

この章をまとめると、サッカーやフットボールの起源は無秩序なボールを追う、命を賭したゲームだったということになります。

では、この無秩序なボールゲームが今につながるスポーツへどのようにして変わっていったのかを次で見ていくことにしましょう。

ボールゲームが2つに分かれた

秩序だったボールゲームの立役者

乱闘まがいの子どもの遊びの延長みたいなものに、統一したルールといったものは存在しませんでした。

むしろ学校ごとにルールは違って当たり前で、その地域や共同体に古来より伝わる「しきたり」を重んじて行われることがほとんどでした!

ですから、対抗試合を行う場合は、そのたびに各校のルールを照らし合わせて協議を重ねる必要があったということです。
スムーズに試合ができず、とても非効率的ですね!

その現状を重く見たケンブリッジ大学の人々は、ついに共通のルールを提案しようと思いつきます。

1863年には、統一ルールを決めるための会議が開かれました。

その中心となったのは、イートン校やウェストミンスター校の卒業生を軸としたイングランド南部のいくつかのクラブの代表者です。

彼らは、「フットボール協会」(Football Association)を作り、ケンブリッジ大学のルールを叩き台にした共通のルールをまとめることにしました。

これでようやく事態は収束したかに思われましたが、これで話は終わりませんでした。

手を使えないことに不満が!

協会側としては、試合中に手を使わないボールゲームをフットボールとして推したかったのです。

しかし、ケンブリッジ大学とは異なるルールを採用していたラグビー校はこれを拒絶!

おそらく手を使えないフットボールなんてありえないという気持ちだったんでしょう。

ラグビー校において、手を使うようになった逸話が残されています。

試合中にウィリアム・ウェッブ・エリスが奪ったボールをそのまま手にしたまま走ったことがきっかけとなり、これがラグビー校の伝統として受け継がれていくことになりました。

この対立をきっかけにして、納得できなかったラグビー校は「ラグビー協会」(Rugby Football Union)を立ち上げます。

このようにして、サッカーの流れをくむ協会式フットボールとラグビーに源を発するラグビー式フットボールのそれぞれが産声を上げることになります。

今も昔も変わりませんが、長い言葉は短くして呼ぶのが流行していました。
それは日本だけにとどまらず、外国においても同じことです。

Association Footballから「soc」だけを取り出し、「c」を重ねて、行為者を示す「er」を付け加えて、「soccer」という略語が生まれました。つまり、サッカーとは、協会式フットボールを略した英単語を意味しているのです。

ですから、「サッカー」という言葉の発祥はイギリスなんです。

サッカーの呼称は、アメリカで定着した!?

協会式フットボールが「フットボール」に!

共通ルールを決める際の不満が原因で、試合で手を使用してもいいラグビー式フットボールと、手を使用してはいけない協会式フットボールに袂を分かつこととなりました。

サッカーという新たな略語が生まれたにも関わらず、イングランドにおいては、協会式フットボールが広く一般的に知られるようになっていました。

それは社会的な存在感が高まったことにより、サッカーというスポーツを単純に「フットボール」と呼ぶようになったためです。

そのため歴史的にイングランドではサッカーを意味する言葉として、フットボールという呼称が定着していきました。

今や世界各地においてその呼び方はいろいろと異なっていますが、フットボールという呼称はサッカーを意味するという認識が一般化しています。

アメリカで誕生したアメフト

その一方で、サッカーがそのまま呼称として定着した国も存在します。

その好例がアメリカです。

アメリカには、どちらのフットボールも伝わりましたが、人気を博したのは協会式フットボールよりもラグビー式フットボールでした。それに飽き足らず、なんと自分たちのオリジナルのフットボールを作っちゃいます!

1880年代に入ると、フットボールをより楽しめるスポーツにしようという空気が高まりました。

それが新たなフットボールへの誕生に拍車をかけることになります。

ついに1985年には初となるプロ独自のフットボールの試合を開催するに至りました。

アメリカでは、協会式フットボールとラグビー式フットボール、それにラグビー式から派生したオリジナルのフットボールの3つが存在することになりました。

プロスポーツとして早い段階からアメリカで市民権を獲得したのは、オリジナルのフットボール!こうしてオリジナルのフットボールは主流派になっていきました。

 

やがて、それは「アメリカンフットボール」という名称で呼ばれるように。ラグビー式フットボールは「ラグビー」、協会式フットボールは「サッカー」と称されるようになりました。

日本での呼称がサッカーになったのは?

1873年(明治6年)、イギリス海軍のダグラス少佐によって日本へ初めてサッカーが伝えられたそうですが、残念ながら海軍を通じての普及は成功しなかったそうです。

その代わりに、日本国内へサッカーを広めたのは、体操伝習所(現筑波大学)の卒業生だと言われています。

体操伝習所は、日本の近代化を進めていくために建てられた学校で、アメリカから招聘した教師によって、授業が行われていました。

そこでサッカーを教わった若者たちが、全国の子どもたちへサッカーを指導していくようになり、広く知られるようになっていきました。

要するに、日本におけるサッカーの伝来はイギリス人によるものですが、その普及に貢献したのは体育教師として招かれていたアメリカ人です。

そのため、その名残を一部の大学の部活の名称に確認することができます。ここでは早稲田大学を例に示します。

サッカー部は『ア式蹴球部』

ラグビー部は『ラグビー蹴球部』

アメフト部は『米式蹴球部』

このように日本にサッカーという呼称が広まった背景には、サッカーの普及に関わった外国との関連性が見られるわけです。

ちなみに、ア式蹴球部はアメリカ式ではなく、アソシエーション式フットボールのことを意味しています。

表記の話題について、日本サッカー協会によれば次のように記載されています。

[公益財団法人 日本サッカー協会]
online: http://www.jfa.or.jp/info/inquiry/2011/11/post-4.html

現在、国際サッカー連盟(FIFA)には208の国と地域(2011年10月1日現在)のサッカー協会が加盟していますが、「サッカー」を協会名につけているのは、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、バージン諸島など少数ではあります。

日本語では「サッカー」が一般的で、協会も日本語表記では「日本サッカー協会」と“サッカー”を使用していますが、英語表記では、「Japan Football Association」と“フットボール”を使っています。

サッカーに関する類語のまとめ

サッカーとフットボールは同じスポーツです。

それなのに異名が誕生してしまった裏には、次の2つが大きく関わっていることが分かりました。

1つは、そのスポーツを愛して止まない人々の思いによるもの。

もう1つは、そのスポーツが定着する際に強い影響を与えたもの。

本場のイングランドではフットボール、日本やアメリカではサッカーという呼称が一般的です。

他の国では、サッカーの母国であるイングランドに敬意を払い、foot(足)とball(ボール)に分けて、その国の言語で表現しています。

しかし、イタリアのカルチョだけはその影響を見ることはできません。蹴るという動詞のcalciareが語源と言われています。

ほんの一部ですが、世界の国々のサッカーの呼び方を一覧にしましたので確認してみてください。

・ブラジルは・・・『futebol(フッチボル)』

・アルゼンチンは・・・『futbol(フトボル)』

・スコットランドは・・・『fitba(フィットボー)』

・オランダは・・・『voetbal(フェトバル)』

・中国は・・・『足球(ズーチュウ)』

(参考文献)
アルフレッド・ヴァール(2002)『サッカーの歴史』大住良之監修、遠藤ゆかり訳、創元社
新星出版社編集部編(2009)『ボールのひみつ』、新星出版社
中西哲夫(2010)『世界のサッカー大百科』、岩崎書店
ベースボールマガジン社編(2010)『Q&A式しらべるサッカー』、ベースボールマガジン社